自分のライフスタイルを再設計するという意味で、この自粛期間は私にとって非常に良い機会となりました。
例えば、自分の家のバルコニーを“都会の農場”のようにして、さまざまな種類の野菜や果物を栽培するようになりました。寝室ではキノコを育てていますし、キッチンでは昆布茶を淹れ、料理もたくさんするようになりました。
ソーシャルメディアを見ていて気づいたのですが、あり余った時間を利用して、誰もがシェフのように様変わりしていますね。人々は創造性でつながり、食べ物でもつながりを持つんです。それはとても素晴らしく、そして健全なことだと思います。
私は自分の仕事を通じて、人間が地球に及ぼすさまざまな影響を間近で見てきました。それはある意味ではとても幸運なことだったと思います。
自分の“外”に目を向けて、環境破壊を理由に企業やビジネスを責めるのは簡単です。私もある意味ではずっと外部で戦って、他人に変化を起こそうとしてきました。
ただ、新しい生活スタイルが生まれる中で、私たちは図らずも自分自身の内面と向き合わざるを得なくなりました。ある意味、自粛期間のおかげで自分を見つめ直せましたし、それはとても貴重な体験だったと言えます。まず自分自身について学ぶこと。そして自分自身が変わることから、外の世界にも良い影響を与えていけるのだと思います。
COVID-19の感染拡大により、世の中では失業や企業の倒産が相次いでいます。私の仕事も大きな打撃を受けています。海外で予定されていた撮影も中止や延期となりました。これまでの働き方を変えるべきタイミングが来ているのだと思います。
しかし一方で、二酸化炭素の排出量が減少したり河川がきれいになったり、自然に対しては良い影響も出ています。「自然はこんな風に回復していくんだ」と人々が目の当たりにする、良いきっかけにもなったのではないでしょうか。
いかにして、これまでのような“普段の生活”に戻るかがよく話題になりますが、必ずしも以前の日常に戻る必要はないと思います。それよりも必要なのは、社会として進化していくことです。
世の中にはいろいろな人がいて、非常事態への反応もさまざまです。そして多くの人がこの状況に対して恐怖を感じているのも確かです。多くの人が仕事に対する素晴らしい構想を持っているはずですが、未知なるものへの強い恐怖が、前進することを阻んでいます。
私たちは「自分の存在は小さく影響力がない」とか「自分に社会を変える力はない」とか考えがちです。そうではなく、ただ自分が好きなことだけを考えてみてください。変化を起こそうと思うのではなく、好きなことを実行して、目標を見つけることが大切なのです。勇気を出して未来へ踏み出すこと、一人ひとりのこの一歩が大きな変化へとつながるのです。
Better Starts Now、それは「未来へ向けて今、始めること」ですね。私たちは今、文明社会として大きな変革の時を迎えています。いろいろなことが浮き彫りになり、経済のもろさも目の当たりにしました。しかし、これはある意味とても貴重な機会だと思います。
また、絆というものを意識する好機にもなりました。自分自身と向き合う時間が増え、家族と対話する時間もできました。社会や世界全体に目を向ける時間だってあります。人々が協力し合いひとつになれば、より良い未来を創れると感じています。
リック・グレハンさん プロフィール